問1. HER陰性例に対する一次治療のレジメンとして、不適切なものを選べ。
a) S-1 + シスプラチン
b) カペシタビン+CDDP+トラスツズマブ
c) カペシタビン+CDDP
d) カペシタビン+オキサリプラチン
e) FOLFOX(フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン)
解答を読む化学療法領域における主な改訂点は、複数の新規薬剤によってレジメンの選択肢が増えたことを背景に、まず治療レジメンが「推奨されるレジメン」と「条件付きで推奨されるレジメン」に大別されたことである。
【HER陰性の場合】
S-1+シスプラチン(CDDP)
カペシタビン(Cape)+CDDP
SOX〔S-1+オキサリプラチン(OHP)〕
CapeOX(Cape+OHP)
FOLFOX〔フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナートカルシウム+OHP〕
【HER2陽性の場合】
Cape+CDDP+トラスツズマブ
S-1+CDDP+トラスツズマブ
が推奨される。
「条件付きで推奨されるレジメン」としては、一次治療にタキサン系薬剤を含むレジメン、オキサリプラチンを含む化学療法とトラスツズマブの併用療法などが記載されている。ここで述べられている条件とは、年齢や合併症、社会的事情など多岐にわたっており、試験問題として提示するには解答が割れやすくなるのではないか、という印象を受ける。
問2 大量補液を要するレジメンを2つ挙げよ。
a) S-1+シスプラチン(CDDP)
b) カペシタビン(Cape)+CDDP
c) SOX〔S-1+オキサリプラチン(OHP)〕
d) CapeOX(Cape+OHP)
e) FOLFOX〔フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナートカルシウム+OHP〕
解答を読む正答 a)、b
シスプラチンを含めたレジメンでは、大量補液を要する。従って、シスプラチンを含まないc)~e)のレジメンは簡便で、高齢者にも適応させやすい。なお、FOLFOXは経口摂取不能の場合などの選択肢となる。
問3 胃癌への二次療法に用いられるものを2つえらべ。
a) インフリキシマブ
b) ニボルマブ
c) イリノテカン
d) パクリタキセル
e) ラムシルマブ
解答を読む正答 d)、e)
a) 胃癌には用いられない(抗TNF-α製剤は抗腫瘍活性を抑制する。癌の発生頻度を助長させた報告は無いが、禁忌となりうる)。
b) 三次療法で用いられる。日本人を含むアジア人を対象にしたATTRACTION-2試験において、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体ニボルマブ群の有効性が示されたことを受けて、2017年9月に同薬の「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発胃がん」への適応拡大が承認された。TOPIXの一つである。
c) 三次療法で用いられる。
d) パクリタキセル(PTX)は毎週投与法で使用される。
e) ラムシルマブ(RAM)は、PTXとともに二次療法として使用される。
問4 胃癌の術後補助化学療法として用いられないものをえらべ。
a) S-1
b) カペシタビン
c) オキサリプラチン
d) ニボルマブ
e) デキサメタゾン
解答を読む正答 d)
改訂ガイドラインでは「S-1単独療法1年間あるいはCapeOXなどのオキサリプラチン併用療法6カ月間」の術後補助化学療法を推奨しているが、日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)が実施したSTART-2試験において、S-1+ドセタキセル併用療法がS-1単独療法と比較して無再発生存期間が有意に良好であったことから、S-1単独療法の在り方について再検証が行われるものと思われる。
問5 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の絶対適応病変ではないものえらべ。
a) 2cm以下の粘膜内癌(cT1a)と診断される分化型癌で、潰瘍や潰瘍瘢痕がないもの
b) 2cmを超えるcT1aの分化型癌で、潰瘍や潰瘍瘢痕のないもの
c) 3cm以下のcT1aの分化型癌で、潰瘍や潰瘍瘢痕のあるもの
d) 2cm以下のcT1aの未分化型癌で、潰瘍や潰瘍瘢痕のないもの
解答を読む正答 d)
従来は「2cm以下のcT1aと診断される分化型癌で、肉眼型は問わず、潰瘍や潰瘍瘢痕がないもの」のみがESDの絶対適応病変とされていたが、選択肢b)とc)に対するESDの良好な長期予後が示されたことから、改訂版では絶対適応病変が拡大された。
問6 ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法に関して、正しい記述をえらべ。
a) ヘリコバクター・ピロリ陽性例に対して、内視鏡的切除前のヘリコバクター・ピロリを除菌することを弱く推奨する
b) ヘリコバクター・ピロリ陽性例に対して、内視鏡的切除前のヘリコバクター・ピロリを除菌することを強く推奨する
c) ヘリコバクター・ピロリ陽性例に対して、内視鏡的切除前のヘリコバクター・ピロリを除菌することを弱く推奨する
d) ヘリコバクター・ピロリ陽性例に対して、内視鏡的切除前のヘリコバクター・ピロリを除菌することを強く推奨する
解答を読む正答 c)
内視鏡的切除後のピロリ菌除菌の有無で、その後の胃癌発生に差を生じるかどうかを調べた比較試験が日本と韓国それぞれで行われた。日本ではピロリ菌の除菌によって発生率が下がるという結果であったが、韓国では、除菌による有効性は証明されなかった。このことから、推奨度は「弱」となっている。
問7 改訂ガイドラインにおける記述として誤っているものをえらべ。
a) 治癒切除が困難な進行胃がんに対する減量手術は、化学療法と比べて生存率の低下や有害事象を招きうるため、推奨されない。
b) U領域(口側1/3)の進行胃がんで、腫瘍が大彎に浸潤していない場合、脾摘を行わないことを強く推奨される。
c) 長径4cm以下の食道胃接合部癌でのリンパ節郭清は、転移頻度の高いNo.1、2、3、7リンパ節および膵上縁リンパ節、下縦隔リンパ節、裂孔部リンパ節で行われる。
d) 進行胃がんの切除時は、腹膜再発を予防するために積極的に網囊切除を行うべきである。
解答を読む正答 d)
選択肢は、いずれも今回のガイドライン改訂のトピックスである。a)~c)は文章通り。 胃切除時に網囊切除を追加することの優越性を検証する大規模な多施設共同第Ⅲ相ランダム化比較試験JCOG1001において、網囊切除は再発率の減少に寄与せず、むしろ全生存期間が不良となる傾向が示された。このことより、今まで慣例的に行われてきた網囊切除には有益性が無いと判断された。 ※本ガイドラインはJCOGで行われた臨床試験を論拠の一つとしている。しかし、JCOGの臨床試験の大半は75歳未満の症例であるため、75歳以上の症例に本ガイドラインを機械的にあてはめることはできない。他領域でも同じことが言えるが、ガイドラインは診療指針に過ぎず、どのような症例においても絶対遵守を意図したものではないということを改めて覚えておきたい。
問8 Ro切除例に関する記載で正しいものをえらべ。
a) Ro切除後症例であっても、ステージⅣであれば術後補助化学療法の効果を期待できない。
b) Ro切除後症例の場合、残存癌細胞は存在しないので術後補助化学療法は不要である。
c) ステージⅣであっても、Ro切除後症例の場合は術後補助化学療法が推奨される。
d) ステージⅣで化学療法を行うタイミングとは、再発が発覚した時である。
解答を読む正答 c)
手術で癌を完全切除できた例のことをRo切除症例と呼ぶ。従来の考え方ではステージIVでは化学療法の効果をほとんど期待できず、再発時に治療を開始すればよいとされてきた。しかし、近年になり化学療法が進歩したことで、Ro切除症例場合であれば、術後補助化学療法の有用性が推測され、推奨度が高くなっている。ステージIVに対する術後補助化学療法が推奨されたには初めてのことであり、ポイントの一つである。