・・・・・・

ん？
技術の進歩ってスゴイなぁ～って、思ってね

ふふ・・・・・・。
これのことよ

そう。
心房細動の治療がここまで大きく変わるなんて、10年前は思いもしなかったわ

う、う～ん・・・・・・

そうね・・・。最近は新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)のことばかりテーマにしていたから、今回は心房細動についておさらいをしてみましょうか

まず、何から話せばいいかしら・・・・・・

？？

じゃあ、患者さんに説明をするような流れで解説をするけど・・・・・・

まず、
「心臓は放っておいても勝手に動いている」
そうじゃない？

それはどうしてかってところから考えてほしいの

ざっくりと話すと、それは心臓が”自分で電気をつくって流しているから”なの

そのとおりよ、吉永さん。

年配の患者さんには、まずそこから言わないと絶対についてこられないわね

証拠を見せればいいのよ

あら、あるじゃない？”心電図”が

・・・・・・で、実はね。
心筋細胞ひとつひとつに、洞結節と同じような発電能力があるの。

そう。
でも、もしも心筋細胞ひとつひとつが自分勝手に発電したり放電したりしちゃったら、心臓はどうなると思う？

心臓は、全身に高率よく血液を駆出するポンプなのだから、心筋全体がまとまった動きをしてくれないと困るわけでしょう？

模型を使って図示すると、こんな具合かしら。

この心筋たちの電気活動を小学校低学年の学級活動に例えるとわかりやすいわ。

みんなでまとまった学級活動(正常な心拍)をするために、クラスのとりまとめが必要でしょう？

そのとおりよ、池田くん。
ちょっと乱暴なセリフ回しをするけど、学級委員長(=洞結節)が、
「いいか、お前ら(=ほかの心筋細胞たち)！
お前らが自分で電気を作れるのは知っているけど、お前らが自分勝手に発電したり放電したりすると、まとまった学級活動ができないだろ。
だから黙ってオレの言うことだけ聞けっ！」
と、他の心筋細胞の電気活動を抑え込みながらクラスをまとめているの。

もう少しキチンとした表現をするなら、”一番刺激頻度の高い心筋細胞(=洞結節)・・・・・・つまり、もっとも早い心拍数をたたき出す細胞が、他の心筋細胞が電気活動を始める前に心臓を刺激して主導権を握ってしまう”ってところなんだけども

さて、ここから心房細動のハナシです

絶対君主的な洞結節に対して、肺静脈と左房の接合部付近の細胞たちが反乱をおこします

そう。
肺静脈と左房の接合部付近の細胞たちが、
「あんな洞結節のいうことなんか聞かなくていいんだ。オレたちはオレたちで、勝手に電気つくって勝手に電気を流して、クラスみんなを扇動しようぜ」
と騒ぎだすのね

まあ、どこのクラスにもいるツッパリくん・・・・・・古い呼び方をするなら”不良クン”とか”ヤンキー”たちね。

とてもいい質問よ、吉永さん。
この学級委員長(=洞結節)のいうことを聞かないヤンキーくんは、単独ではなくグループだっていうところがミソなの

一匹オオカミタイプの、友達のいないツッパリくんではなく(←ちなみに、この一匹オオカミ型不良を単発性期外収縮という)、何人かでつるんでいる不良グループなのよ。彼ら一人一人が、それぞれ思い思いにクラスに指示(電気)を流しこむのよ

こうして、洞結節は不良グループたちにクラスの指揮権を奪われてしまうの

学級委員長(=洞結節)が、
「起立！礼っ！着席！」
と号令をかけようとしたら、その学級委員長よりも早く不良グループが号令をかけてしまうようなものね

さて、なんとかして正常な脈・・・・・・つまり学級委員長(=洞結節)の指揮権を取り戻したいわね

その方法を考えておいてもらうのを、次回までの宿題にしましょう