問14. 急性胆嚢炎を示唆するエコー所見として、典型的ではないものをえらべ。
a) 胆嚢壁肥厚 (>4mm)
b) 胆嚢腫大 (長径>8cm、短径>4cm)
c) seashore sign
d) sonolucent layer (hypoechoic layer)
e) intraluminal flap
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Sonolucent layerとは、胆嚢壁が浮腫をおこして白い層が描出される所見を指す。この所見はCTでも確認できる場合がある。
Seashore signとは、肺エコーの時に正常肺で見られる所見である。
Intraluminal flapとは、胆嚢粘膜剥離の所見であり、急性胆嚢炎による刺激が示唆される。
問15. 急性胆嚢炎と鑑別するうえで、特に女性に特徴的な疾患を二つえらべ。
a) 急性心筋梗塞
b) Fitz-Hugh-Curtis症候群
c) 急性膵炎
d) 便秘症
e) 急性虫垂炎
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上記に挙げた疾患群は、すべて急性胆嚢炎との鑑別を要されるものである。
Fitz-Hugh-Curtis症候群は、女性生殖器からのクラミジア感染で骨盤内~肝周囲炎に至った急性腹症である。
虫垂炎は、妊娠期になると虫垂が頭側に持ち上げられるため、右上腹部痛をきたすことがある。
問16. 急性胆管炎に対する胆管ドレナージの方法として、まず考慮されるものを二つえらべ。
a) 内視鏡的経鼻胆管ドレナージ (ENBD)
b) 経皮経肝胆道ドレナージ (PTCD)
c) 開腹下外科的ドレナージ
d) 内視鏡的胆管ステンティング (EBS)
e) 超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージ (EUS-BD)
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急性胆管炎に対するゴールデンスタンダードな治療法として、内視鏡的経乳頭的ドレナージ術が挙げられるが、本手技はENBDとEBSの二つに大別される。ENBDの方が胆道の洗浄や細胞診もいつでも行うことができるが、自己抜去リスクの高い高齢者などではEBSが選択される場合もある。
EUS-BDは、経十二指腸ないし経胃的に肝内胆管までの廔孔を作る手技であるが、いまだ確立しきれておらず、ENBDやEBSほどの普及には至っていない。
問17. 急性胆管炎の重症度判定において、中等症のものを二つえらべ。
a) 乏尿
b) 白血球数>12,000/mm3、または<4,000/mm3
c) 黄疸
d) 意識障害
e) PT-INR>1.5の肝機能異常
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新しいガイドラインでは、急性胆嚢炎の重症度判定基準と、急性胆管炎の重症度判定基準が別々に記載されている。中等症基準では白血球数のちがい(胆嚢炎では>18,000/mm3)や症状持続時間の項目(胆嚢炎では72時間以上)など、細かな差異がみられるものの、いずれの病態でも重症例の基準はほぼ同じである。
実臨床上は、両者が混在した症例を経験することも少なくないため、「多臓器不全を呈していれば重症」、「胆道系の炎症に限局しているうちは中等症」と覚えておくとよい。
こうした重症度判定の見直しの背景には、古典的なReynolds5徴を伴う急性胆管炎が稀であり、かつての「急性閉塞性化膿性胆管炎」という用語の定義や根拠が曖昧になって混乱をきたしていたことが挙げられる。その後、早期の胆管ドレナージを要する患者を抽出することを第一義として重症度の判定基準が整理された。従って、この基準で「重症」とされた症例とは、「緊急ドレナージをしなければ生命にかかわる症例」を意味する。
一方、「軽症」の症例群とは、保存的治療や内視鏡的処置、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うにしても待機的で良い群である。「中等症」は、「重症未満で軽症以上」の群であり、「緊急ドレナージを行うことになるかもしれない、重症予備群」という位置づけである。
問18. 胆管空腸吻合が行われている症例に用いられる抗菌薬として、適切ではないものをえらべ。
a) メトロニダゾール
b) クリンダマイシン
c) タゾバクタム・ピペラシリン
d) シプロフロキサシン
e) フルマリン
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抗嫌気性のある薬剤が望ましいため、d)以外が正解である。
メトロニダゾールは、嫌気性菌の菌体内の酸化還元作用でニトロソ化合物に変化し、強力な殺菌作用を発揮する薬剤である。耐性菌ができにくいことも特徴のひとつであり、2014年に保険適応が拡大された。
一方、クリンダマイシンは選択可能な薬剤ではあるものの、世界的に耐性化が進み、SIS/IDSA2010ガイドラインでは推奨薬から削除されていることに留意する必要がある。
ニューキノロン系薬剤は、βラクタム系アレルギーの代替薬として用いることができるが、腸内細菌の耐性化が深刻なため、なるべく感受性結果が判明した後に使用されることが好ましいとされている。
問19. バンコマイシン耐性腸球菌による胆道炎の場合に推奨される薬剤はどれか?二つえらべ。
a) リネゾリド(ザイボックス®)
b) スルバクタム・セフォペラゾン(スルペラゾン®)
c) メロペネム(メロペン®)
d) セフタジジム(モダシン®)
e) ダプトマイシン(キュビシン®)
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本邦におけるバンコマイシン耐性腸球菌の保有率は少ないが、地域に蔓延化しやすいため早急な治療が必要である。この場合、リネゾリド(ザイボックス®)、ダプトマイシン(キュビシン®)の使用が推奨されている。
なお、従来からスルバクタム・セフォペラゾンのように胆汁への移行性が優れた薬剤が望ましいとされてきたが、エビデンスは明確ではなかった。胆管が閉塞して内圧が亢進していれば胆汁にも移行しにくいため、胆汁移行性よりも組織移行性や薬剤感受性が重視されるべきと考えられる。
d) のメロペネム(メロペン®)、およびd)のセフタジジム(モダシン®)は、緑膿菌やアシネトバクターの場合にメロペネム単独、もしくはセフタジジムとメトロニダゾール(アネメトロ®)との併用療法が推奨されている。
近年、院内感染の原因菌として注目されているESBL産生菌に対しては、カルバペネム系抗菌薬、タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®)、アミノグリコシドが推奨される。