問8. Murphy徴候を説明した記述として、正しいものをえらべ。
a) Murphy徴候とは、吸気時に右季肋部を圧迫すると痛がる所見を指す。
b) Murphy徴候とは、吸気時に右季肋部を圧迫すると痛みで深呼吸が止まる所見を指す。
c) Murphy徴候とは、呼気時に右季肋部を圧迫すると痛がる所見を指す。
d) Murphy徴候とは、呼気時に右季肋部を圧迫すると痛みで深呼吸が止まる所見を指す。
解答を読む
しばしば誤解されているが、痛がることではなく、痛みで「ウッ」と息が止まってしまう現象を指す。ちなみに、Courvoisier(クールボアジェ)徴候と混同されている記述も散見されるが、Courvoisier徴候は触診にて無痛性の胆嚢腫大を触れることを指す。
問9. 胆嚢機能が正常だが、散発的な軽い症状を有する症例に対して、適切と思われる治療方針を二つえらべ。
a) 腹腔鏡下胆嚢摘出術を行う。
b) 胆嚢炎の予防目的で胆嚢ドレナージを行う。
c) 直径15mm未満の浮遊結石であれば、溶解療法を試みる。
d) 直径30mm未満の単発結石であれな、体外衝撃波破砕療法(ESWL)を試みる。
e) 経過を観察する。
解答を読む
a) 文章の通り。なお、総胆管結石の症例において、内視鏡的治療後に胆嚢摘出術を施行するか否かについては、結石径が10mm以上や膵炎合併の例では胆嚢摘出術が施行されるべき、とされている。そのほか、胆嚢癌併発例であれば、腹膜播種のリスクの点から、開腹手術が望ましいとされる。
b) 急性胆嚢炎を合併していれば、早期の胆嚢摘出術、または胆嚢ドレナージが推奨される。
c) 文章の通り。
d) 正しくは直径20mmである。ただし、ESWL後の再発率が高いことや、膵炎、胆管炎合併率が問題視され、近年はあまり実施されなくなった。
e) 無症状であり、かつ胆嚢壁肥厚が無ければ経過観察の対象となる。
問10. Lemmel症候群の説明として適切なものはどれか。
a) 十二指腸乳頭部の憩室が膵胆管で圧排され、胆汁うっ滞や膵炎を起こす病態。
b) 胆嚢頚部での炎症や結石によって総胆管が圧排されて狭窄をきたした病態。
c) 総胆管が機械的な圧排狭窄受け、胆嚢胆管廔を形成した病態。
d) 遺伝的なJAG1遺伝子やNotch2遺伝子の異常によって、小葉間の胆管が少なく、肝内胆汁うっ滞を来たした病態。先天性心疾患や腎障害を伴う。
解答を読む
もともとは1937年にPapillen症候群として報告されたが、いつの間にかLemmel症候群に名称が変わった。稀な疾患ながらも保存的治療での再発が多く、内視鏡的乳頭切開術や外科的手術が考慮される。
b)はMirizzi症候群のⅠ型、c)はMirizzi症候群のⅡ型である。さらに厳密に言えば、Mirizzi症候群にはⅢ・Ⅳ型もある(Ⅱ~Ⅳは、廔の範囲による)。手術での胆嚢摘出術が基本であるが、胆管形成に難渋しやすく、術式も複雑化するとされている。
d)は先天性疾患のひとつであるAlagille症候群の概説である。心疾患や腎不全を合併する。
問11. 結石に対する治療方針として、一般的ではない記述を二つえらべ。
a) 総胆管結石症への内視鏡的治療として内視鏡的乳頭括約筋切開術を施行した。
b) 胆管炎を合併したため、内視鏡的胆管ドレナージ術を行った。
c) 胆嚢摘出術の施術が困難な高齢者への長期予後改善効果に期待して、胆管ステントを留置した。
d) 総胆管のほかに胆嚢結石も合併していたため、腹腔鏡下胆嚢摘出術と内視鏡的総胆管結石除去術を併用した。
e) 肝内結石が認められたため、ウルソデオキシコール酸を処方した。
解答を読む
胆管ステントは胆管炎の予防にはつながらず、あくまでも短期予後改善効果を念頭におくべき治療である。
肝内結石に対する薬物療法の有用性は、未だ十分に検討をされていない。
問12. 結石への侵襲的治療後の予後・経過として誤っているものをえらべ。
a) 胆嚢摘出術後、消化吸収能が著しく低下する。
b) 胆嚢摘出後でも遺残胆嚢炎を生ずることがある。
c) 総胆管結石治療後、結石の再発や急性胆嚢炎を生ずる例は8-10%前後にのぼる。
d) 肝内結石治療後の長期合併症のうち、最多は結石の再発である。
解答を読む
胆嚢摘出後も腸肝循環の回数が増加することで、胆汁酸プールサイズが保たれ、脂質や脂溶性ビタミンの吸収には支障をきたさないとされている。ただし、二次胆汁酸の増加で下痢や軟便をきたす症例はしばしば経験される。
問13. 59歳女性。間歇的な右季肋部痛を主訴に来院した。
過去にβラクタム系抗菌薬でアレルギー歴がある。意識清明で、血圧 152 / 80 mmHg、心拍数 82 bpm、体温 37.6℃、酸素飽和度 97 %(室内気)。
主な採血所見では、白血球数 1万2000 /μL、CRP 13 mg/dL、総ビリルビン 2.5 mg/dL、BUN 19.3 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL。
腹部エコーを当てたところ、胆管拡張が認められた。
次にとるべき処置として、適切なものを二つえらべ。
a) ペンタゾシンを使用する。
b) CT検査を行う。
c) 昇圧剤を用いる。
d) シプロフロキサシンを投与する。
e) 緊急胆道ドレナージを行う。
解答を読む
a) 鎮痛が高度であれば鎮痛薬を考慮するが、間歇的であり、自制の範囲内であれば優先度は低い。また、ペンタゾシンはOddi括約筋を収縮させ、胆道の排泄を妨げる可能性がある。
b) 肝胆道系の異常を評価する上で有用である。
c) 重症例ではないため、昇圧剤は不要である。
d)、およびe) 本症例は軽症例の胆嚢・胆管炎であり、まずは絶食管理下での抗菌薬投与が治療方針となる。初期治療に反応しない場合に、ドレナージを考慮することになる。
GradeⅠの胆嚢炎に対する抗菌薬は、スルバクタム・アンピシリン(ユナシン®)やセファゾリン(セファメジン®)、セフォペラゾン(スルバシリン®)が頻用されている。ガイドラインでは優先順位の選択は困難とされているが、大腸菌が大半(全体の31-44%)であることを考えると、セフェム系を第一選択として使用している施設が多いのではないだろうか。ただし、本症例の場合はアレルギーがあるためニューキノロン系のシプロフロキサシンを用いる。
また、胆道移行性の高い薬剤を選択する考え方も普及しているが、胆嚢内圧が高まっている状態での移行性は未検証であり、明確なエビデンスは報告されていない。
そのほか、2014年にはメトロニダゾールも保険承認されたことも記憶に留めておきたい。