問22. ACSに合併する不整脈に関して、正しいものをえらべ。
a) PCIが主流となった現代において、AMI後のVTやVfの発生率は1%程度である。
b) アミオダロン抵抗性のVT/Vf症例の場合、まずはリドカインを用いる。
c) ACS発症48時間以降に発症した持続性VT/Vf症例の場合、植え込み型除細動器の適応となる。
d) 促進心室固有調律が認められた場合、速やかに電気的除細動を行う。
e) 頻脈性の心房細動が認められた場合、まずはジゴキシンを投与する。
解答を読む
a) PCI後のVT/Vf発生率は5.7%、つまり20例中1例の割合で、PCI後にCCUでVTが起こり、除細動などの救命処置を要する可能性がある、ということを意味している。
b) ガイドラインの推奨クラス順に素直に従えば、アミオダロン→ニフェカラント→リドカインの使用順になる。
c) 文章通り。
d) 促進心室固有調律(AIVR)とは、slow VTとも呼ばれる心拍数100bpm以下のwide QRSの頻脈である。VT/Vfの危険因子を示唆する報告は無く、原則的には経過観察で十分である。
e) β遮断薬は心拍調節、抗虚血作用、交感神経抑制効果などの面でclassⅠ相当である。慎重な用量調整が求められる急性期診療の性格上、超短時間作用型のランジオロールが頻用されている。そのほか、自己抜針など不穏行動の多い高齢者の管理においても病棟管理が容易な点から、貼布薬のビソノテープ®が使用されるケースが増えてきている。
問23. ACSにともなう心原性ショックについて、正しいものをえらべ。
a) 収縮期血圧100mmHgであっても心原性ショックの狭義の定義に合致する。
b) 機械的合併症を有する症例にはハートチームで協議する。
c) 機械的合併症を有する症例に対してIABPは無効である。
d) 心原性ショックにおいて、とくに血圧が低い場合はドブタミンを第一に使用する。
e) ショック状態でもβ遮断薬を休薬するのは好ましくない。
解答を読む
a) 狭義の定義は、①収縮期血圧90 mmHg未満、または平常時より30 mmHg 以上の血圧低下、②乏尿(20 mL/ 時未満)、③意識障害、④末梢血管収縮(四肢冷感、冷汗)のすべてを満たしている場合である。が、収縮期血圧90mmHg以上でも四肢冷感や乏尿などを伴っていれば、プレショックと診断し、心原性ショックに準じた対応を行う。
b) 文章どおりである。
c) IABPを使用する。
d) 血圧が低い場合はドパミンを、血圧維持例ではドブタミンを用いる。
e) 昨今は、急性期でもβ遮断薬投与が推奨されるシーンが増えているが、過去の時代にβ遮断薬が心不全に禁忌だったことにも相応の理由がある。血圧が低く忍容性に乏しい場合は、β遮断薬の休薬に踏み切らざるをえないことは認識する必要がある。
問24 ACSに関与した急性腎障害について、誤っているものを二つえらべ。
a) 腎障害の予防のため、カテーテル手技の前後で1ml/kg/時の輸液をおこなうことが望ましい。
b) 腎障害予防で用いる補液は生理食塩水が望ましい。
c) カテーテル手技後、透析で体内の造影剤を可能なかぎり除去することが望ましい。
d) カテーテル手技後、肺うっ血が無くともフロセミドで利尿をかけて体内の造影剤を排出することが望ましい。
e) 腎障害予防のため、造影ずる数時間前に重炭酸ナトリウム液を使用する場合もある。
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透析やフロセミドでの造影剤腎症予防の効果は確立されていない。
とくにフロセミドは腎症を増悪させると報告されているため、肺うっ血が無い限り、使用は控えるべきである。
問25 梗塞後心膜炎に対する処置として誤っているものをえらべ(『旧ST上昇型心筋梗塞症について-2013年版-』の問4と同一の問題)。
a) 高容量アスピリンを用いた。
b) アスピリン無効例に対しアセトアミノフェンを用いた。
c) 難治性の場合にコルチコステロイドを用いた。
d) 鎮痛目的でNSAIDSを用いた。
e) 鎮痛目的でイブプロフェンを用いた。
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イブプロフェンはアスピリンの抗血小板作用に干渉するため禁忌である。
問26 心臓リハビリテーションについて、正しいものをえらべ。
a) 早期離床のため、ST上昇持続例や心嚢液が進行性に増加してきている例であっても、リハビリテーションは積極的におこなう。
b) 亜急性期の5METs以下の運動耐用能の症例は予後不良である。
c) 起立性低血圧を起こしやすいため、数時間単位での座位保持は避けるべきである。
d) 不感温度(36℃)での温水浴は不整脈を惹起する。
解答を読む
a) 心破裂のリスク症例には、リスクが持続する第9病日までは血圧の上がる内容のリハビリテーションを避ける必要がある。
b) 運動で血圧が下がる症例も予後不良である。
c) 臥位のままでいることが、循環血漿量を減少させることにつながるため、1日数時間の座位保持が推奨される。
d) 不感温度での温水浴についての検討は不十分であるが、不整脈や血行動態の破綻を招いたとする報告はない。
問27 ACSに関わる病態について、誤っているものをえらべ。
a) 本邦においては、女性での発症例は高齢者であることが多く、そのぶん腎障害などを併存しやすい。
b) 急性大動脈解離の3-15%でACSを合併する。
c) 冠攣縮性狭心症ではプラークが破綻することはない。
d) 特発性冠動脈解離では、造影で解離所見を確認できず、血管内超音波などでの冠動脈イメージングを用いて診断がつく例も多い。
e) 大動脈弁の病変は、冠動脈塞栓症の原因となりうる。
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a)、b)は文章通り。
c) 冠攣縮の際に内皮の配列が乱れ、線維性被膜が破れることはある。攣縮反応自体が凝固系を活性化させることもあいまって、血栓形成が助長される。
d) 特発性冠動脈解離は極めて稀であるが、リスクファクターの無い女性の症例で散見される。造影で必ずしもすぐに診断がつくわけではなく、血管内超音波偽腔が発見されて初めて解離の病態であると判明することも多い。
e) 大動脈病変の乱流で血栓が生じることがあると報告されている。が、塞栓症の原因の多くは心房細動や奇異性塞栓、悪性腫瘍、感染性心内膜炎といわれている。
問28 ACS二次予防の観点で、禁煙を促す5Aアプローチについて、誤っているものをえらべ。
a) Aim
b) Advise
c) Assess
d) Assist
e) Arrange
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正しくは、以下のとおり。
Ask:診察のたびに喫煙状況をたずねる
Advise:禁煙の必要性を説く
Assess:禁煙の意思を評価する
Assist:禁煙治療を支援する。たとえば禁煙補助薬の導入やカウンセリングなど。
Arrange:禁煙開始日の1週間以内に経過観察日を設ける。喫煙継続者には、次回の禁煙を促す
問29 ACSの二次予防上の薬剤について、誤っているものを二つえらべ。
a) 出血リスクが高い症例において、二剤抗血小板療法と抗凝固薬による三剤併用療法を長期間行うことは望ましくない。
b) 二剤抗血小板療法の継続期間に関して、欧米ではPRECISE-DAPTスコア、もしくはDAPTスコアのツールが知られている。
c) いかなる症例においても、ACSを来たした症例には高用量のストロングスタチンを投与する。
d) 最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロール値が70mg/dl以下に達しない場合は、エゼチミブの追加を考慮する。
e) 糖尿病合併例では、SGLT2阻害薬を積極的に使用する。
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c) スタチンによる冠動脈疾患予防効果はほぼ確立しているといえるが、これまでの大規模臨床試験からは、80歳以上の高齢者、透析患者、心不全の活動期の患者は除外されており、彼らにも適用されるかどうかは不明である。
e) 昨今話題になっているSGLT2阻害薬についてであるが、原著のすみずみまで精読すると、抑制しえたのは「心不全」と「原因不明の死亡」のみである。虚血性心疾患の再発予防効果は全くなく、むしろ狭心症と心筋梗塞の発症数を加算して解析し直してみると、冠動脈疾患が増加する傾向がみられる。