さいきん成長を実感できないあなたへ~いまの研修施設は、自分に合っていますか?~

この記事は2022年11月12日に更新しました。

もくじ

 

Ⅰ. はじめに ~こんな悩みの方はいませんか?~

★「救急当直をやらせてもらうのはやりがいがあるけど、自分のやった処置って正しかったのかな・・・?」
★「同期はどこまで成長しているのだろう?」
★「なんだかポリクリのやり直しみたいな研修生活だな・・・」

この記事は、そんな悩みを抱えている初学者、そして研修医の方に読んでほしいと思い書いています。

はじめまして。
管理人の沖波あぐら(本名非公開)と申します。

私も、研修医のみなさんと同じ臨床研修制度を履修しました。現在は循環器内科でPCIやペースメーカの手術、心エコー図検査などの専門診療を行っていますが、研修医時代の経験を活かしたプライマリケアの実践もめざしています(著者プロフィール参照)。

いま、私は研修施設から遠ざかりましたが、これまでに多くの研修医を指導してまいりました。そして、毎年のように進路について多くの相談を寄せられていました。

・自分の診療スキルはどのくらい向上しているのか?

・今後、自分はどこに向かうのか?

伸び悩む“壁”にあたり、将来像が見えてこない不安感は相当なものでしょう。

そこで、同じ研修医制度で学んできた先輩だからこそ見える視点もあるはずだと思い、本コンテンツを立ち上げました。
冒頭で挙げましたような、漠然とした不安を抱えている方にとって、少しでも一助になればよいな、と思います。

このページでは、研修施設の特性を現実的な視点に沿ってまとめてみました。
「極論に過ぎる!」
と反論はあろうかと思われますが、初期研修医は将来の日本の医療を担う大事な社会資源です。
建前を抜きにした、現実的な側面もみておくべきでしょう。
慎重に将来を考えていただく際の参考にしてもられれば幸いです。



Ⅱ. 大学病院での初期研修で得られるものはあるのか??

大学病院の特徴は、地方の病院では治療が難しい症例があつまってくることです。

それは、特殊な専門治療や高度医療を提供するなど、高度医療施設としての使命を帯びているからです。

紹介患者を受け入れることが大半ですから、ほとんどの患者が既に診断のついた症例ばかりです。

症候学を武器に診断をくだしたり、初期対応を学びたい人にとっては、大学病院での研修は不向きかもしれません。

 

実際に、大学病院では初期研修医に対してどのような指導をおこなうのでしょう?

医局の立場に立って考えてみるとわかりやすいと思います。

毎年研修医はやってきますが、同時に、研修医を修了した新入入局員(三年目の医師)もやってきます。

医局というものは、関連病院に人員を派遣する、という切迫した状況を常に抱えています。

はたして、どちらを育てることに注力するでしょうか?

 

巨大組織の運営上、大学病院は“カリキュラムとしての制度”には詳しいかもしれませんが、現実的には初期研修医のあつかいを若干もて余し気味の印象があります。

大学のスミにある研修室で、何をするでもなく呆けているだけの研修医も少なくありません。

かつて筆者も、某大学病院に勤めていたときは、

「初期研修医に、もっとやりがいを与えてやってほしい!」

と意見したことがありますが、労働組合の意見が強くコメディカルが研修医の教育に非協力的であったり、単純にいじわるな、いじめっ子の性格のスタッフも相当数いたりしましたから、実態の是正は難しいと思います。
本当に変な話だと思うでしょうが、研修医に一人で採血させるだけで、看護師が慌てて指導医に電話をかけてきたこともあるくらいです。「やらせていいんですか?」と。

 

一方で、すでに自分の専門診療科を確定していて、「自分の専門診療科の視点で他科をローテートしてみる」と大胆に割り切っているような研修医であれば、大学病院でも損はないと思います。

次項で述べる内容ですが、ひとつの専門診療科に特化した、いわゆるスペシャリスト医をめざしている方ならば、一か月でも早く専門診療科で学び始めたほうがよいでしょう(モチベーションも変わるでしょう)。

Ⅲ. 地方病院での初期研修で注意することとは?

地方の市中病院は、人員が少ないため、研修医を即戦力として重宝する傾向があります。

救急外来を任されるシーンも多く、急患へのファーストタッチ、そしてプライマリケアを経験されたい方は、地方病院での研修の方が向いているでしょう。医師として大切にあつかわれ、手技も多く経験させてもらえます。

オールラウンダーを目指したい人は、間違いなく地方の病院で研修を積むべきです。

また、手技を多く経験させてもらえることから、スペシャリスト医を目指す足がかりとしても良いかもしれません。

 

「都内の大学病院では末梢静脈路の確保と鈎(こう)持ち程度しかやらせてもらえないのに、田舎の地方病院では手術の執刀までさせてもらった」

などという話も聞きます。

当然、だらだらと助手しかやらせてもらえないのと、早いうちから執刀医をさせてもらうのとでは、経験値がけた違いになってきます。

 

本来の臨床研修制度の在り方から考えると、研修は地方の病院で行うべきなのかもしれません。

しかし、井の中の蛙になりやすいという欠点もあります。

しかも大海を知らない蛙です。

 

初期研修を修了したあとも、ずっと地方の病院で研修を続けているレジデントを見ることがあります。

自ら進歩できるレジデントならば、特に問題はありません。

ですが、“気持ちが初期研修医のまま”というレジデントも相当数見かけるのです。

いわば、研修医を留年している人々を指し、彼らが非常にもったいないと思うのです。
このあたりについては、『総合診療科』を逃げ場にしていませんか?もご参照ください。

 

居心地のよい施設で甘えたくなる気持ちはわかりますが、臨床力が伸びなくなったとき、いちど院内での自分のポジションを客観的に見直してみましょう。

いつのまにか、救急当番の穴埋めとしてあつかわれているだけになっていませんか?

 または、上司の先生に「アレ処方しといて」と、雑用を頼まれるだけの診療実態になっていませんか?

 

あえてキツい表現を用いますが、上に挙げた内容は、頼まれて満足してよい仕事ではありません。

 

仕事をした気になって瞬間的な満足感は得られても、それ以上先の深い診療を学ぶ機会が損なわれてしまうので、長い医者人生という視点でいえば大きなマイナスポイントになります。

 

いま地方の病院に勤めていて、伸び悩んでいる方は、その施設で得るものはもう無いのかもしれません。臨床研修施設の特性を考えて、いちど有名病院や大学病院のようなスペシャリスト医の集まる病院で新たなステップを踏んだほうが、得られるものが多い可能性があります。

「いまの施設が名残惜しい」

そんな場合は、自分の実力を伸ばしてから戻ってきてもよいのですから。

なお、市中病院に戻るつもりの方は、大学に入局してしまうと、人事命令で人生の身動きがとれなくなってしまうことを覚悟しておくべきでしょう。

カドを立てず、いずれ戻りたい、という意思がある方は、院長の推薦状を持参して民間の有名病院に勤務させてもらう、という手段がもっとも有効だと思います。

Ⅳ. まとめ

本ページでは、施設の性質のちがいを中心に述べましたから、
「初期研修するなら地方の病院がいい!」
という内容に近くなってしまったかもしれません。

ですが、このページで真にお伝えしたかったのは、
「今の、その施設のままでいいのか?」
と、考え直してみてほしかったのです。

「あなたが伸び悩んでいるのは、本当にあなたのせいでしょうか?」

たしかに勉強は自習が基本ですから、伸び悩みの原因の多くは自分の勉強の取り組み方にあります。
ですが、ことに臨床経験というものは、座学やイメージトレーニングのみでは集積されません。
別項で述べる『On the job training(OJT)』があってこそ、初めて成長するものです。

自分の成長を実感できないとしたら、そうした質の良い機会を与えられない施設側に問題があるのかもしれませんよ?

POINTS!

伸び悩んでいるのは、今の研修施設の特性に合わないからかも・・・?

大学病院での初期臨床研修は、プライマリケアを学ぶにはやや不適。

地方病院での初期臨床研修は、戦力として使ってもらえるためやりがいがあるが、天狗や井の中の蛙にならないように注意しよう!

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