問12 脳血流シンチグラフィ上、Lewy小体型認知症で血流の低下がみられる特徴的部位を二つえらべ。 a) 後部帯状回 b) 楔前部 c) 前頭葉 d) 一次視覚野 e) 頭頂葉 解答を読む
解答 d)、e) a)~b)はAltzheimer型認知症で血流低下が認められる部位である。また、e)の頭頂部でも血流低下が認められることがある。これら血流低下がみられる部位は、アミロイドPETにおいて、アミロイドが蓄積する部位と一致する。c)の前頭葉での血流低下は、進行性核上性麻痺の所見である。Lewy小体型認知症では後頭葉で血流低下が認められる。 そのほか、Lewy小体型認知症ではMIBGシンチグラフィでMIBGの取り込み低下が認められる点も重要である(頻出問題)。
問13 CT上、Altzheimer型認知症で特に萎縮が顕著な部位はどこか。二つえらべ。 a) 海馬 b) 前頭葉 c) 側頭葉 d) 頭頂葉 e) 後頭葉 解答を読む
解答 a)、c) 側頭葉内側と海馬の萎縮は、病理所見と比較した感度・特異度とも80%前後である。脳血流シンチグラフィなどはさらに特異度が上昇する。FDG-PETやアミロイドPETは特異度が90%後半という数値であるが、保険適応外である。
問14 Altzheimer型認知症で認められる脳脊髄液所見として、あてはまるものを二つえらべ。 a) ミエリン塩基性蛋白の上昇 b) αシヌクレインの上昇 c) アミロイドβ42の低下 d) リン酸化タウの上昇 e) プログラニュリンの上昇 解答を読む
解答 c)、d) a) 多発性硬化症の所見である。 b) Lewy小体型認知症の所見である。 e) 前頭側頭葉変性症の所見である。 そのほか、Altzheimer型認知症では総タウも上昇するが、総タウはCreutzfeldt-Jakob病でも上昇する(Creutzfeldt-Jakob病に対して保険適応)。 Altzheimer型認知症での脳脊髄液バイオマーカーは、感度と特異度ともに90%以上であり、脳アミロイドPETと剖検病理所見との一致率は96%だと報告されている。また、アミロイドβ42は、予測認知症発症年齢の25年前から減り始めることが示されている。一方で、総タウは予測認知症発症年齢の15年前から上昇し始めるとされる。 アミロイドβ42は画期的なバイオマーカーだが、Lewy小体型でも上昇する場合があり、単独検査での鑑別は困難である。なお、リン酸化タウは認知症精査目的で保険適応となった。
問15 認知症の身体診察上、正しい組み合わせはどれか。 a) Lewy小体型認知症・・・Argyll Robertson瞳孔 b) 進行性核上性麻痺・・・舞踏病 c) Altzheimer型認知症・・・ミオクローヌス d) 把握反射・吸引反射・・・前頭側頭葉変性症 e) 正常圧水頭症・・・すくみ足歩行 解答を読む
解答 e) a) Argyll Robertson瞳孔は対光反射が減弱、かつ輻輳反射が保持されるもので、神経梅毒で見られる。 b) 進行性核上性麻痺では垂直性眼球運動障害を来す。舞踏病はHuntington病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症で認められる。 c) ミオクローヌスは、Creutzfeldt-Jakob病、大脳皮質基底核変性症でも認められる。 d) 把握反射などは前頭葉徴候と呼ばれ、前頭側頭葉変性症でみられる。 e) 正常圧水頭症では、開脚位のすり足歩行がみられる。小刻み歩行、すり足歩行はLewy小体型認知症で認められる。認知症に伴う身体所見は頻出問題である。Lewy小体型認知症では自律性神経障害を合併することも抑えておきたい。
問16 認知機能を低下させる薬剤として非典型的な薬剤をえらべ。 a) 抗喘息薬 b) H2ブロッカー c) 抗コリン薬 d) 整腸剤 e) 抗Parkinson病薬 解答を読む
解答 d) 認知機能低下を誘発する薬剤は非常に多彩で、全てを記憶することは不可能である(多すぎて試験問題としては出しにくい)。
問17 以下の向精神薬のうち、糖尿病に対して原則禁忌となるものを二つえらべ。 a) オランザピン b) リスペリドン c) クエチアピン d) アリピプラゾール e) ベンゾジアゼピン系睡眠薬 解答を読む
解答 a)、c) オランザピン、クエチアピンは糖尿病患者には原則禁忌であり、リスペリドン、アリピプラゾールは糖尿病症例には慎重投与である。
問18 Altzheimer型認知症への薬剤療法において、非典型的な副作用はどれか。 a) 頻脈 b) 便秘症 c) 吐き気 d) 失神 e) 頭痛 解答を読む
解答 a) Altzheimer型認知症への主な治療薬は、コリンエステラーゼ阻害薬、またはNMDA受容体拮抗薬である(Lewy小体型でも同様)。第一選択薬であるコリンエステラーゼ阻害薬の有害事象には、徐脈、QT延長、吐き気、嘔吐、下痢が挙げられる。NMDA受容体拮抗薬の主な副作用は、傾眠、めまい、便秘、頭痛が挙げられ、両薬剤で失神が惹起されることがある。 2018年現在、使用可能なコリンエステラーゼ阻害薬はドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3剤である。NMDA受容体拮抗薬はメマンチンが挙げられる。 なお、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体とは、記憶や学習に深く関わる脳内の受容体のことである。