問1 認知症の診断基準として不適切なものをえらべ。 a) 記銘力障害 b) 視空間認知障害 c) せん妄 d) 言語機能障害 e) 社会的行動の粗雑化 解答を読む
解答 c) 認知症の診断基準は、ICD-10、NIA-AA、DSM-5などで言及されているが、せん妄のような特殊な状況・環境下で生じるものは除外する必要があるとされている。
問2 treatable dementiaとして不適切なものを二つえらべ。 a) ビタミンB12欠乏症 b) 正常圧水頭症 c) Parkinson病 d) 甲状腺機能低下症 e) 医薬品使用による認知症 解答を読む
解答 c)、e) 治療可能な認知症として、元も有名な疾患は慢性硬膜下血腫であるが、それ以外にもいくつかの可逆性の疾患が挙げられる。 医薬品使用による認知症は様々であるが、DSM-5では軽度認知障害の下位分類に相当されている。
問3 うつ病とAlzheimer型認知症を比較して、うつ病に認められる所見はどれか。 a) うつ病では自己の機能障害を過大評価する。 b) 記銘力低下が遷延する。 c) 抗うつ薬に反応しない。 d) 動作・思考緩慢がみられる。 e) 集中力低下がみられる。 解答を読む
解答 a) Alzheimer型認知症では、病識が無いため自己の機能障害の程度を過小評価する。
問4 本邦における認知症の疫学において、誤った記述はどれか。 a) 65歳以上の有病率は15%前後である。 b) Alzheimer型よりも血管性認知症が増加傾向にある。 c) 認知症患者の死亡率が増えているという報告は乏しい。 d) Lewy小体型認知症は、認知症の原因のうち、上位3番目である。 e) 認知症患者は増加傾向にある。 解答を読む
解答 b) 血管性認知症よりも、Alzheimer型認知症が増加傾向にある。
問5 認知症の各型と病理学的背景の組み合わせで、誤っている記述はどれか。 a) Alzheimer型・・・アミロイドβの蓄積 b) Lewy小体型・・・αシヌクレインの神経細胞内蓄積 c) 前頭側頭葉変性症・・・Pick小体(タウ) d) 大脳皮質基底核変性症・・・グリア細胞へのタウの蓄積 e) Primary age related tauopathy・・・アミロイドβの蓄積 解答を読む
解答 e) a)~d)は文章通り。e)のPrimary age related tauopathyは、アミロイドβの蓄積は欠くものの、海馬辺縁系に限局してAlzheimer型と同じような神経原線維変化を生じるもので、80-90歳の超高齢者に多いとされている。 これらの他、海馬の神経細胞脱落とグリオーシスを特徴とする海馬硬化症や、慢性的な頭部外傷を繰り返しタウが蓄積する慢性頭部外傷性脳症、虚血性脳症などがある。
問6 Lewy小体型認知症で初期から出現する症候として、特異的なものを二つえらべ。 a) 錯視、幻視 b) 構成障害 c) 失算 d) 失行 e) 逆向性健忘 解答を読む
解答 a)、b) a) 視空間認知障害はAltzheimer型認知症でもみられるが、特に錯視と幻視という症状はLewy小体型認知症で多くみられる。 b) 図形の模写や手指肢位模倣の異常として検出ができる。 c) 各種認知症で見られ、特異的とはいえない。 d) 失行は大脳皮質基底核変性症の症状である。 e) 逆向性健忘とは、発症前のことを思い出せない健忘のことであり、嗜銀顆粒性認知症の症状である。Altzheimer型、およびLewy小体型では、発症後に起きた新たな出来事を覚えられない前向性健忘のパターンをとる。
問7 Lewy小体型認知症で特異的な症状はどれか。 a) 非流暢性失語 b) 四肢運動失行 c) パレイドリアテストで異常 d) 攻撃的行動 e) 物盗られ妄想 解答を読む
解答 c) a) 前頭葉中心の機能低下で生じる。側頭葉の機能低下では流暢になる。 b) 大脳皮質基底核変性症で見られる。 c) パレイドリアとは、意味の無い図形が顔に見えたり、壁のシミや雲の形が何か意味のある形に見えることを言う。 d) 前頭側頭葉変性症で見られる。 e) Altzheimer型認知症で見られる。
問8 前頭側頭葉変性症で初期から出現する症候として、特異的ではないものを二つえらべ。 a) 地誌的失見当識 b) 脱抑制 c) 遂行機能障害 d) 失語 e) 失書 解答を読む
解答 a)、e) 上記のうち、失語はAltzheimer型認知症の初期でも認められる症状であるため、正確にはd)は△である。
問9 100から7を引く行為は以下のうち何に相当するか。 a) 予定記憶 b) 作業記憶 c) 意味記憶 d) 非陳述記憶 e) 出来事記憶 解答を読む
解答 b) 主な具体例を挙げる。 a) 「今から風呂場に行って湯を入れてくる」(これからすべきことを覚えておいて、適切な時期にと状況で実行する機能):遂行機能が該当。 b) 「今から言う電話番号を覚えて、すぐにかけ直してください」(数秒間だけ記憶を把持(即時記憶)して実行する機能):引き算もこれに該当。 c) 「太陽の周りを地球が回って昼夜が生まれる」(物事の意味・知識の記憶) d) 「慣れ親しんだ踊りを踊る」(技能としての手続き記憶):自転車運転も該当。 e) 「今朝、家で顔を洗った」(いつ、どこで何をしたか):単語を覚えさせて5分後に尋ねる質問も出来事記憶に該当。
問10 以下のBPSD(認知症の行動・心理症状)のうち、典型的ではない組み合わせをえらべ。 a) 抑うつ・・・Altzheimer型認知症 b) 不安感・・・Altzheimer型認知症 c) アパシーや、異食ないし過食・・・FTLD d) 同居人妄想・・・FTLD e) 嫉妬妄想・・・DLB 解答を読む
解答 d) 同居人妄想はDLBの症状である。 実際のところ、BPSDは各種認知症でまたがって認められる上に病期によっても臨床像が変化していくため、本設問のようにクリアカットに分類することはできない。抑うつはDLBでも支持されるし、アパシー(意欲低下)はFTLD以外でも認められる。 なお、FTLDは前頭側頭葉変性症、DLBはLewy小体型認知症の略語であり、日常診療でも頻用される。
問11 認知機能障害を評価する上で、スクリーニングとして有用な評価尺度はどれか。 a) WAIS-Ⅲ b) WMS-R c) SLTA d) CAT e) MMSE 解答を読む
解答 e) a) Wechsler成人知能検査 第3版。知能評価に用いられる。 b) Wechsler記憶検査。記憶評価に用いられる。 c) 標準失語症検査。言語評価に用いられる。 d) 標準注意検査法。注意機能に用いられる。 e) ミニメンタルステート検査。国際的にも標準的に用いられているスクリーニングツールである。 上記a)~d)は専門的な検査法であり、スクリーニング後に行われる物である。 本邦においては、MMSEの他に長谷川式スケール(HDS-R)が用いられている。HDS-Rは国家試験にも頻出であるため、非神経内科医であれば、むしろHDS-Rに慣れたDrが多いかもしれない。 上記のほか、BPSDの評価尺度としてNPIも使用されている。