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問1 原発性骨粗鬆症の診断において、骨密度(BMD)を測定するうえで推奨されていない部位はどれか。
a) 腰椎
b) 大腿骨近位部
c) 橈骨
d) 第二中手骨
e) 頭蓋骨
解答を読む正答 e)
BMD測定は、原則として腰椎で計測する。脊椎変形などで腰椎で計測が出来なければ大腿骨近位部、大腿骨近位部で計測が出来なければ、橈骨や第二中手骨で計測する。
問2 原発性骨粗鬆症への薬物治療開始基準について、正しいものを二つえらべ。
a) 軽微な外力による脆弱性骨折のみで、薬物治療を開始することはできない。
b) 骨密度がYAMの70%以下の場合、-2.5SD以下でなければ薬物治療を開始できない。
c) 骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合、大腿骨近位部の家族歴があれば薬物治療を開始できる。
d) 骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合、FRAX®の10年間骨折確率(主要骨折)が15%以上であれば薬物治療を開始できる。
e) 糖質コルチコイドや関節リウマチを有する症例でも、この薬物治療開始基準を適用できる。
解答を読む正答 c)、d)
a) ×。大腿骨近位部または椎体での軽微な外力による脆弱性骨折があれば、薬物治療を開始することができる。
b) ×。骨密度がYAMの70%以下の場合、もしくは-2.5SD以下の時に薬物治療を開始できる。なお、BMD測定時に橈骨や第二中手骨を使用した場合、SDは計測できない。
c) ○。文章通り。
d) ○。文章通り。FRAX®とは、ヨーロッパ、北米、アジア、オーストラリアでのコホート研究に基づいて開発された骨折リスク評価ツールである。BMDを測定できれば、ネットで容易に算出が可能である。
e) ×。FRAX®には、糖質コルチコイドや関節リウマチの有無を記入する項目がある。この薬物治療開始基準は原発性骨粗鬆症を対象としたものであるから、FRAX®でのこれらの項目が「なし」である症例に限って適用できる。
問3 85歳女性。立位から尻もちをついたため来院した。本症例で、『骨密度がYAMの80%未満』という条件を満たさなくても原発性骨粗鬆症と診断づけられるものをえらべ。
a) 大腿骨近位部骨折
b) 肋骨骨折
c) 骨盤骨折
d) 上腕骨近位部
e) 下腿骨骨折
解答を読む正答 a)
本問は、問2を補完するために設けた。“軽微な外力”とは、立位からの転倒、またはそれ以下の外力を指す。上記b)~e)のほか、橈骨遠位端も脆弱性骨折の好発部位である。 なお、骨密度が-2.5SDより大きく-1.0SD未満の症例は骨粗鬆症に満たず、骨塩減少と呼ばれる。
問4 骨粗鬆症の疫学について、正しいものをえらべ。
a) 男女差はほとんど無い。
b) 腰椎骨折と大腿骨近位部骨折の患者数はほぼ等しい。
c) 大腿骨骨折の患者数は増加傾向にあり、今後も増え続けていくことが予想される。
d) 腰椎骨折の患者数は増加傾向にあり、今後も増え続けていくことが予想される。
解答を読む正答 c)
骨粗鬆症は女性に多く、腰椎骨折での男性患者数は80万人であったのに対して、女性患者数は560万人であった。大腿骨近位部骨折の場合、男性では260万人、女性では810万人であった。なお、部位別に見ても大腿骨骨折の症例が非常に多いことは明らかである。 椎体骨骨折の出生年別コホート研究を見ると、出生が10年遅いと、椎体骨骨折の発生率が半減することが示されており、今後は経時的に椎体骨骨折の発生率は頭打ちになると予測されている。
問5 骨粗鬆症の予防に関して、正しいものをえらべ。
a) 日光浴は必要ない。
b) カルシウムのサプリメントの摂取量に上限はない。
c) 背筋強化訓練は骨粗鬆症の予防に有用である。
d) 閉経後の患者に対しての積極的なウォーキングは、転倒の恐れがあるため行うべきではない。
e) 片足起立訓練は転倒の恐れが高いため、禁忌である。
解答を読む正答 c)
a) ビタミンD合成のため、1日15分ほどの日光浴が必要とされている。
b) 1日のカルシウム摂取量は700mgから800mgとされているが、急激な高カルシウム血症のリスクを考慮して、1回あたりのサプリメントの服薬量は500mg以下に抑えるべきである。
c) 背筋強化訓練のほか、太極拳なども予防に有用であることが証明されている。
d) 1日8000歩のウォーキングを週に3日行うことで、骨密度が上昇することが報告されている。
e) 片足起立訓練はフラミンゴ療法と呼ばれており、転倒予防に効果的とされる。無論、理学療法中の転倒防止は必要である。
問6 以下のうち、骨形成マーカーを二つえらべ。
a) 骨型ALP(BAP)
b)Ⅰ型プロコラーゲン-N-テロペプチド(P1NP)
c)Ⅰ型コラーゲン架橋 N-テロペプチド(NTX)
d)Ⅰ型コラーゲン架橋 C-テロペプチド(CTX)
e)酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ5b分画(TRACP-5b)
解答を読む正答 a)、b)
上記のa)、b)が骨形成マーカー、c)~d)が骨吸収マーカーである。骨形成マーカーはテリパラチドの治療効果をみたり、ビスホスホネートの長期投与時のチェックに用いられる。原発性骨粗鬆症は発症早期から骨吸収が亢進する点から、骨吸収マーカーが高値であれば、骨密度低下が軽微であったとしても骨吸収抑制薬の積極的な投与が推奨される。なお、BAP、P1NP、TRACP-5bは日内変動や腎障害の影響が小さいため、実地診療で使いやすいマーカーとして知られている。
問7 骨粗鬆症に対する治療として、誤っているものを二つえらべ。
a) 椎体形成術は除痛効果が高く、統計上も有用性が高いとされている。
b) 後弯矯正術は骨粗鬆症への外科手術としてスタンダードな治療法である。
c) カルシトニン投与は急性期の除痛効果を期待できる。
d) ビスホスホネートの副作用として、顎骨壊死や大腿骨骨折が挙げられる。
e) デスノマブの副作用として、低カルシウム血症や顎骨壊死が挙げられる。
解答を読む正答 a)、b)
a) 椎体に骨セメントを充填する椎体形成術は一時脚光を浴びたが、偽手術との比較を行ったRCTで有意差が得られなかった。
b) 後弯矯正術は、椎体内をバルーンで拡張させて椎体の圧潰を整復してから骨セメントを充填する手技である。保存的治療よりも短期除痛効果があるとされているが、費用対効果の点から骨粗鬆症への標準的外科手術法とはいえない。
c)~e)とも、文章の通り。
※デノスマブとは、分子標的薬の一つで、RANKLを標的としたヒト型モノクローナル抗体製剤である。本邦では2013年に骨粗鬆症への適応が承認されている。
問8 デノスマブの適応疾患として誤っているものを二つえらべ。
a) 大腸癌
b) 骨粗鬆症
c) 骨巨細胞種
d) 多発性骨髄腫
e) 子宮体癌
解答を読む正答 a)、e)
2018年5月現在、デノスマブはb)~d)のほか、乳癌と関節リウマチに対しての臨床試験が進行中である。
問9 骨粗鬆症治療薬と副作用の組み合わせで、誤っているものをえらべ。
a) 高カルシウム薬・・・・・・胃腸障害
b) メナテトレノン・・・・・・ワルファリンと拮抗
c) ビスホスホネート・・・・・顎骨壊死
d) ラロキシフェン・・・・・・静脈血栓症
e) テリパラチド・・・・・・・非定型大腿骨骨折
解答を読む正答 e)
a) 文章通り。そのほか、ビタミンD製剤も同様の胃腸障害(下痢や食思不振)を起こす。
b) ビタミンK2であるから、ワルファリン服用患者への投与は禁忌。
c) ビスホスホネートに関しては副作用がいくつか報告があり、顎骨壊死のほかに非定型大腿骨骨折、胃腸障害、インフルエンザ様発熱が挙げられる。ビスホスホネート薬は様々な薬剤が開発されており、日常診療で頻繁にみかける薬剤であるため、副作用については熟知しておきたい。
d) エストロゲン受容体に結合することで、乳房や子宮には抗エストロゲン作用を、骨にはエストロゲン様作用を発揮する薬剤である。エストロゲンホルモンと同様の副作用を有する。
e) 副甲状腺ホルモン薬の一つ。2018年1月には、重大な副作用として『意識消失』が追記された。これは、今まで『ショック』とされていた項目に加えられる形で追記となった。
問10 続発性骨粗鬆症の原因疾患として考えにくいものをえらべ。
a) クッシング症候群
b) 副甲状腺機能低下症
c) 糖尿病
d) 慢性閉塞性肺疾患
e) 慢性腎臓病
f) 関節リウマチ
g) ワルファリン服用者
解答を読む正答 b)
正答は副甲状腺機能亢進症である。上記のほか、ステロイド投薬中の患者や、婦人科疾患へのホルモン低下療法を受けている患者なども続発性骨粗鬆症のリスクである。