問1. 骨形成の仕組みを説明せよ。
解答
骨芽細胞がアルカリフォスファターゼ活性を持ち、周囲のリン濃度を上昇させる。その結果、リン(P)とカルシウム(Ca)がくっついて骨形成を成す。
問2. 骨吸収の仕組みを説明せよ。
解答
破骨細胞が酸性フォスファターゼを分泌して骨を融解させる。
問3. 副甲状腺ホルモン(PTH)の徹底した主目的といえば?
解答
血清Ca値を上昇させる。
(そのためなら、あらゆる手段を用いる。)
問4. 副甲状腺ホルモン(PTH)の作用とは?
解答
ⅰ) 骨への作用→骨吸収促進(脱灰)
ⅱ) 腎臓への作用→(近位尿細管) PとHCO3-再吸収抑制
(近位尿細管) Vit.D活性化
(遠位尿細管) Ca再吸収(ただし微弱)
問5. なぜPTHは近位尿細管でPとHCO3-を排泄しようとするのか?
解答
・PはCa2+とくっついて石灰化してしまいかねないから。
・HCO3-はアルカリ性なので、HCO3-を体外に追い出せば、体内はアシドーシスに傾き、free Ca2+が増えてくれるから。
問6. 血中PHとCa2+の関係は?
解答
アシドーシス:free Ca2+ ↑
アルカローシス:free Ca2+ ↓
アルカローシスになると、アルブミンにくっついていたH+が離れて別の陰イオンのもとへ鞍替えしてしまう。するとアルブミンは陰イオン化する。そこへくっつくのがCa2+である。よって、free Ca2+が低下する。生理活性のあるCaはfree Ca2+なので、Ca総量は変わらないのに低Ca血症となる。
問7. アルブミンとCa2+の関係は?
解答
原則的に、血中Ca2+の半分はfree、半分はアルブミンとくっついている。
よってアルブミンが減ると必然的にfree Ca2+が増える。
具体的には、アルブミン≦4g/dLの時、
補正血清Ca=実測血清Ca+4-血清アルブミン
問8. なぜPTHは近位尿細管でVit.Dを活性化させるのか?
解答
活性化Vit.Dは腸管からのCa吸収を促進するので。
問9. 活性化Vit.Dのそもそもの主目的は?
解答
骨のリモデリング。
そのために、腸管からのCa再吸収↑や腎臓でのCa再吸収↑をする裏で、骨芽細胞を増やしたりもしている。~Vit.Dさんへのインタビュー「PTHをどう思うか」~
「私はただ骨リモデリングをして、丈夫な骨を作ってあげたいだけなんです。なのに副甲状腺さんは、私が骨吸収やCa2+上昇の作用を持っているからといって自分の味方だと勘違いして、いつもしつこくプレゼント(活性化)」してくるんです。ご厚意はありがたいのですが、私は一匹オオカミでやりたいし、PTHの介入で下手にリモデリングのバランスも崩れるので、常々“やめてください”と副甲状腺さんに言ってはいるんです。困った人ですね」
問10. PTHの分泌を亢進/抑制する因子は?
解答
|
PTH分泌亢進 |
PTH分泌抑制 |
血清Ca |
↓ |
↑ |
血清P |
↑ |
↓ |
血清Mg |
↑ |
↓ |
Vit.D活性化 |
↓ |
↑ |
問11. PTHの分泌に必要な微量元素は?
解答
問12. 高Ca血症だと尿中Caはどうなる?
解答
高Ca尿症となる。
単純に、排泄が増えるからである。
問13. 低P血症ということは、尿中Pはどうなっている?
解答
高P尿症となっている。
※問4.で示したように、PTHは近位尿細管でPの排泄を、かつ遠位尿細管でCaの再吸収を行っている。従って、低P血症+高P尿症、および高Ca血症+高Ca尿症となる。低Ca尿症にならないのは、Ca再吸収の力が今一つ微弱だからである。
問14. PTH分泌が亢進して尿中Caと尿中Pが上昇する結果、尿には何が生成される?
解答
問15. 急性低P血症の原因を6つ挙げよ。
解答
ⅰ) 糖尿病性ケトアシドーシスの回復期
ⅱ) 急性アルコール中毒
ⅲ) 重度熱傷
ⅳ) TPNの投与中
ⅴ) 長期の低栄養後の栄養摂取再開直後
ⅵ) 重度の呼吸性アルカローシス低P血症は臨床で遭遇する機会が稀であるが、TPN投与の際に、微量元素を混合する必要性があることから、本問は頻出問題の一つである。昨今、高齢者医療が注目を浴びていることから、上記ⅴ)の症例が増加する可能性がある。
問16. 慢性低P血症の原因を6つ挙げよ。
解答
ⅰ) 副甲状腺機能亢進症
ⅱ) クッシング症候群
ⅲ) 甲状腺機能低下症
ⅳ) テオフィリン中毒
ⅴ) 利尿薬の長期使用
ⅵ) アルミニウムの長期摂取(制酸薬)本問についても、高齢者医療とつながりが深い。筆者の見解だが、腎障害を有しているだけでⅳ)~ⅵ)はリスクが高まる上に、心不全パンデミックと関連させて考えれば、今後もこのような電解質異常の有病率は上昇する可能性が高いと思われる。
また、ⅵ)は末期腎不全患者で透析や薬剤によるPO4の喪失を合併しているときに生じやすい。透析を行っている高齢者で、アルミニウム含有制酸薬が処方されているケースは日常的に多くみられていると思われるが、皆さんの周囲ではどうであろうか。
問17. 一般的に、透析患者ではPTHが高値であるのに血清Ca値は低値となる。その理由を述べよ。
解答
ⅰ) 慢性腎不全でリンを排泄できず高P血症となること
ⅱ) Vit.D活性化不足で低Ca血症となること
これらの機序で続発性副甲状腺機能亢進症を来たしているからである。
よって、透析患者は骨がもろくなりやすいために、カルシウムの補充やVit.D活性化製剤、リン排泄薬を使用しているのである。
問18. カルシトニンはどこから分泌される?
解答
問19. カルシトニンが最も活発に分泌される時期は?
解答
胎児期。
血中Caをかき集めて骨を作るので。出生に伴ってPTHが放出されると、このカルシトニンの作用に抑制がかかるようになっていく(IVGR児だと、ここでPTHが放出されないので、カルシトニンの相対的過剰効果で骨形成にCaを消費されてしまい低Ca血症となる)。
問20. カルシトニンの作用は?
解答
問21. カルシトニンがいまいちPTHと互角に拮抗できない理由は?
解答
破骨細胞に抑制をかけることしかしないので、血清P値はPTHと同様に低下する。
問22. 血清Caの正常値は?
解答
問23. 高Ca血症を来たす疾患を4つ挙げよ。
解答
ⅰ) 原発性副甲状腺機能亢進症・・・病的骨折、尿路結石、便秘を来たす。
ⅱ) 悪性腫瘍・・・最多。
ⅲ) Vit.D過剰症
ⅳ) サルコイドーシス
問24. 悪性腫瘍が高Ca血症をもたらす機序を2つ挙げよ。
解答
ⅰ) 骨融解
ⅱ) 副甲状腺ホルモン関連蛋白PTH related protein(PTHrP)
問25. PTHとPTHrPの違いを2つ挙げよ。
解答
ⅰ) PTHrPはHCO3-の再吸収を抑制する力が弱く、代謝性アルカローシスを引き起こす。Cl-はHCO3-と交換で排泄されるため、どんどんHCO3-が再吸収される本症では、低Cl-血症となる。
ⅱ) Vit.D減少(原因不明)。
問26. サルコイドーシスでは、なぜ高Ca血症になるのか。
解答
肉芽腫の中の活性化マクロファージがVit.Dを活性化させるので。
問27. 高Ca血症の臨床症状を臓器別に挙げよ。
解答
ⅰ) 腎障害・・・Caが集合管に沈着し、尿濃縮障害
尿路結石
ⅱ) 消化器症状・・・ガストリン↑で消化器潰瘍(Zollinger-Ellison症候群)
腸管運動抑制で便秘、嘔吐
ⅲ) 神経筋障害・・・細胞外液にCa2+が増えた分、膜電位が深まり細胞は脱分極しにくくなる。よって興奮しにくくなる(テタニー症状の逆)
ⅳ) 循環器症状・・・QT短縮
ⅵ) その他・・・掻痒感、異所性石灰化、帯状角膜症
問28. 高Ca血症のほかに、嘔吐の原因となる電解質異常といえば?
解答
問29. 高Ca血症の治療を述べよ。
解答
ⅰ) 体外にCaを追い出す・・・①生理食塩水の点滴(1st choice)
②ループ利尿薬
ⅱ) 骨吸収抑制・・・①ビスフォスフォネート
②カルシトニン
③副腎皮質ステロイド本問は、頻出問題である高Caクリーゼの治療方針でもある。国試でも専門医試験でも必ず出題されるため、確実におさえておきたい。
問30. 高Ca血症に対し、利尿薬でもサイアザイド系利尿薬は禁忌であるのはなぜか?
解答
問31. 低Ca血症を疑った場合、まず何でもって鑑別を行うか。
解答
補正Ca2+を算出して、真性の低Ca血症か否かを鑑別する。
問32. 低Ca血症を呈する疾患を4つ挙げよ。
解答
ⅰ) 副甲状腺機能低下症 ←PTH↓
ⅱ) くる病(骨軟化症) ←活性型Vit.D作用不足
ⅲ) 慢性腎不全 ←活性型Vit.D作用不足
ⅳ) 急性膵炎 ←溶けた脂肪とCa2+がけん化をおこすため。
問33. tetanyの発生機序を述べよ。
解答
細胞外液のCa2+濃度低下により膜電位が浅くなり、閾値が下がることで神経・筋が容易に脱分極するようになる。
問34. tetanyを示す徴候を2つ挙げよ。
解答
ⅰ) Troussea(トルソー)徴候
ⅱ) Chvostek(クヴォステーク)徴候
問35. Troussea(トルソー)徴候とは?
解答
上肢の筋攣縮により、手首と第一指が屈折し、他の四指が伸展した状態。
問36. Chvostek(クヴォステーク)徴候とは?
解答
問37. なぜ低Mg血症でも低Ca血症症状が出現するのか?
解答
問38. 低Ca血症の治療を3つ挙げよ。
解答
ⅰ) グルコン酸Caの投与
ⅱ) ビタミンD投与
ⅲ) マグネシウム補充
問39. 原発性副甲状腺機能亢進症の原因を頻度とともに3つ挙げよ。
解答
80% 腺腫
15% 過形成(=MENⅠ型)
5% 癌
問40. 原発性副甲状腺機能亢進症の検査を3つ挙げよ。
解答
・頚部エコー(CTでも可)
・201T1・99mTcサブトラクションシンチグラフィ
・MIBIシンチグラフィ
問41. 副甲状腺機能亢進症の特徴的なレントゲン所見を3つ挙げよ。
解答
・歯槽硬線(lamina dura)の消失
・頭蓋骨の顆粒状脱灰(salt and pepper)
・指骨短縮
問42. 続発性副甲状腺機能亢進症の原因を2つ挙げよ。
解答
・慢性腎不全
・骨軟化症(Fanconi症候群を考える)
問43. HAM症候群とは何か。
解答
副甲状腺機能低下症+Addison病+カンジダ症(モリニア症)
問44. 副甲状腺機能低下症を来たす疾患を3つ挙げよ。
解答
・HAM症候群
・低マグネシウム血症
・DiGeorge症候群
問45. 偽性副甲状腺機能低下症の本態は?
解答
問46. 偽性副甲状腺機能低下症の特徴的所見を2つ述べよ。
解答
・低カルシウム血症でtetanyを生じる。
・異所性石灰化
問47. 偽性副甲状腺機能低下症における異所性石灰化による症状を3つ挙げよ。
解答
・大脳基底核石灰化による錐体外路症状
・白内障
・第4中手骨短縮
問48. オールブライト遺伝性骨異栄養症(AHO)体型の4つの特徴を挙げよ。
解答
問49. Ellsworth-Howard試験とは?
解答
偽性副甲状腺機能低下症を疑った際に行う試験。副甲状腺ホルモンを投与して、尿中cAMP排泄増加反応が欠如したものをI型、正常反応を示すものをII型としている。特にAHOはⅠ型に含まれる。Ⅰ型は受容体異常が本態であり、Ⅱ型は受容体に正常に結合するが、正常な作用が発揮できない原因不明の病態である。